「統合失調症になった話(※理解ある彼君はいません) 推しと福祉に救われて社会復帰するまでの劇的1400日」(以下、「統合失調症になった話」)の読書感想文です。
初めての体験をした
こんな体験をしたのは初めてでした。「統合失調症になった話」を購入日に一気読み。読後、感動。次の日は噛み締めるように読み、途中で泣く…。一度読み終わった本を次の日にまた最初から読むなんて初めての体験。
それぐらい心に残り、心を掴まれた漫画がズミクニ著、「統合失調症になった話」。著者のズミクニさんが発症した統合失調症と闘病した1493日間を、テンポの良いコミックエッセイ形式で読むことができます。
著者のズミクニさんの漫画を初めて知ったのはTwitter。近年、エッセイ的漫画をTwitterで掲載することはよくありますが、その中でも一際印象に残る漫画です。
著者と編集者のTwitterスペースで「#理解のある彼君はいませんというハッシュタグをつけたら、飛躍的にいいね数が伸びました」と語っていたように、僕もそのインパクトのあるハッシュタグで初めて知りました。
統合失調症に関心を持つ
漫画のテーマは統合失調症。この上なく人を選ぶテーマですが、私は深い関心がありました。とある歌から興味を惹かれ、精神科医の相談を集めた本「こころと脳の相談室名作選集 家の中にストーカーがいます」でさらに深い関心を持つようになりました。
同時に、統合失調症の方が見える世界にも関心を持つように。しかしながら、私は統合失調症ではありません。統合失調症になるわけにもいかないでしょう。
そんな中、出合った「統合失調症になった話」。漫画の冒頭で歯車に押しつぶされてるユニコーンが登場。金色の縁に彩られる世界、そしてストーカー…。「これが統合失調症の世界か…」僕の見てみたかった世界がこの漫画にはありました。
閉鎖病棟の世界にも関心を持つ
発症後、暴れてしまうズミクニさんは閉鎖病棟に入ります。この閉鎖病棟の存在もまた、僕にとっては興味深いものでした。興味を抱いたきっかけは、村田らむさんが潜入した閉鎖病棟の話を聞いたこと。
ズミクニさんの漫画の閉鎖病棟には終始、誰かが壁を叩くような描写があり、村田らむさんの話とも一致して合点がいきます。
前向きと感謝
なんといってもこの漫画最大の魅力は「前向き」と「感謝」。
ズミクニさんはかなり辛い立場にも関わらず、漫画の随所で前向きに生きていく場面が登場します。それを見て、ズミクニさんを応援する気持ちと、「自分も前向きに生きよう」と心が熱くなるのです。
そして「感謝」。辛いことがあっても周りの感謝を忘れずに生きていきます。
「感謝」の対象は多岐に渡ります。Twitterのフォロワーや家族。精神科や閉鎖病棟のお医者さんや看護師さん。就労事業移行サービスなどのスタッフの方。さまざまな方と福祉の助けを借りながら、ズミクニさんは社会復帰していきます。
最終盤のセリフ「私も働く事で誰かの生活を支える一本の綱になりたい」に涙が溢れます。
助けられた存在は違いますが、僕もまた、いろんな人の助けにあって生きていることを実感し、じーんと胸が熱くなります。僕も働いていこう。助けられて生きてきたように、誰かの助けになれるように生きよう。そう胸に刻める素晴らしい作品でした。