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北のお笑いは「ない」のではなかった ー 令和ロマン・髙比良くるま著「漫才過剰考察」の衝撃

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M-1グランプリを2年連続優勝した令和ロマンの高比良くるまによる「漫才過剰考察」を読みました。この本は漫才を深く分析した著作で、M-1グランプリや寄席、地域別のお笑いなど様々なテーマで語られています。

令和ロマン・髙比良くるま著「漫才過剰考察」

これからお笑いを始めたい人はもちろん、現役の芸人にも大変参考になる内容です。特に寄席でウケるようにするにはどうした方が良いかについて、それなりの数のお笑いの本を読んできた私も初見の内容でした。

特に印象に残ったのは地域によるお笑いの差の話です。よく話に上がるのが「東」「西」のお笑いの違い。西はそもそも幼少期からお笑いの習慣があるとか、関西弁が漫才に有利だとか。

私が以前読んだナイツ塙宣之著「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」でも、いかに漫才において関西や関西弁が有利かを論じています。

なぜ、そんなにおしゃべりが好きなのか。それは、会話の中に常に笑いがあるからだと思います。このバックボーンが関西の漫才文化を支えているんでしょうね。サッカーで言えば、関西は南米、大阪はブラジルと言っていいでしょう。ブラジルでは子どもから大人まで、路地や公園でサッカーボールを蹴って遊んでいます。同じように、大阪では老若男女関係なく、そこかしこで日常会話を楽しんでいます。​​​​​​​​​​​​​​それが、そのまま漫才になっているのです。

塙宣之著「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」 P35より

しゃべくり漫才のルーツは関西です。必然、漫才という演芸そのものが関西弁に都合がいいようにできています。言ってしまえば、漫才の母国語は関西弁なのです。

塙宣之著「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」 P37より

しゃべくり漫才の母国語は関西弁なわけですから、関東の言葉でそれをやろうとすることは、日本語でミュージカルやオペラをやるようなものなのかもしれません。無理ではないけど、どうしたって不自然さは残ります。

塙宣之著「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」P47より

「漫才過剰考察」が優れているのは「東」と「西」以外に「南」と「北」も論じたことです。私は本では初めて見ました。

「南」のお笑いについては「宴会」のお笑いだと論じています。博多華丸・大吉、パンクブーブー、天竺鼠、とろサーモン、スリムクラブ、からし蓮根など。この「南」のお笑いを「宴会」だとする論は、博多大吉のPodcast「いったんここにいます」で聴いたことがありました。

私は南のお笑いを「宴会」とする論は両氏からしか聞いたことがないのですが、もしかしたら芸人界隈では有名な話であり、他の誰かが論じたものが伝播しているのかもしれません。または高比良くるまが博多大吉の話を聞き、自説に組み入れたのかもしれませんが、それはわからない話です。

最も驚いたのは「北」についてお笑いを論じている箇所です。私は北海道札幌市に40年弱住み、子供の頃からお笑いの番組を見続けた結果、北特有のお笑いについては「ない」と思っていました。札幌にいた頃のタカトシはつまらないと思っていたし(突然、東京で面白くなって驚きました)トムブラウンも東京に行ってから知りました。札幌吉本はありますが、ごく一部の吉本お笑いファン以外には話題にすら上がりません。

その「ない」と思っていた「北のお笑い」の特徴を高比良くるまは見事に論じていきます。詳しくは本書を熟読してください。

漫才過剰考察

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