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ヤマギシ会について扱った「洗脳の楽園」書評(米本和広著)

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洗脳の楽園

長く時間がかかりましたが、素晴らしい本を読み終わりました。ヤマギシ会について扱った「洗脳の楽園」。

お金もなく、配給される無農薬の野菜を食べ、全員が平等であり、みんなで話し合って問題を解決する…という左翼の理想みたいな「ヤマギシ会」。

しかし時折、勃発する子供たちの脱走騒動。筆者はヤマギシ会の調査を始め、ヤマギシ会の実顕地に足を運びます。

そこには子供たちの脱走とはほど遠い、みんな笑顔で楽しそうな楽園。しかし、ヤマギシ会の脱会者に話を聞くと、楽園とはほど遠い別の話が聞こえてきます。どちらが正しいのか? 筆者は圧倒する取材量でヤマギシ会の本当の姿に迫っていきます。

この本で最も素晴らしかったところはヤマギシ会の「特講」について、初めて解き明かしたところ。「特講」はヤマギシ会に入るときに必須の数日間に及ぶ合宿です。ヤマギシ会について反対意見を持っていた人も特講を経験すると、ヤマギシ会に入会してしまう。そんな魔法のような特講では何が行われているのでしょうか?特講がどんなことをしているか、誰に聞いても内容を教えてくれません。

そこで筆者は特講に潜入。潜入の様子を記録し、特講に入った人がどのように変わっていくのかを伝えます。そしてヤマギシ会の何が問題で、楽園に思える場所に集った人たちはどんな道を辿っていくのか。

緻密な圧倒的な取材で、ヤマギシ会の問題点がありありと浮きぼるになる素晴らしい本。

こういう本を出すと、命を狙われたり、日常生活に支障が出るようなことがあるとは思いますが、それでも書き、発表しているルポライターの米本和広さんを心から尊敬します。

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