今は構成・コント作家として、大活躍するオークラさん。そのオークラさんがまだ何者でもなかった少年時代から、ピン芸人、コンビ時代、そして作家となるまでを「さまざまなカルチャーが融合するコントライブを作り上げる」というビジョンに向かい、進んでいく濃密な青春自伝「自意識とコメディの日々」
本書では色々な芸人との交流を熱く描く…。登場人物はバナナマン、バカリズム、アンタッチャブル、アンジャッシュ、おぎやはぎ、東京03、ラーメンズ、佐久間宣行…など。
東京のお笑いが好きな人にとっては嬉しすぎるエピソードばかり。各お笑い芸人が何が得意でどんな下積み時代を過ごしていたかもわかる胸熱エピソード満載。
僕も自意識が強い人間だ。それを抱えながら、ビジョンに向かって進んでいこうと強く思った一冊。以下に印象に残った笑いについての箇所を引用する。
このネタ作りの時に、設楽さんが言った、今もシチュエーションコントを書く時の指針となっている言葉がある。
「矛盾を消せば、笑いが生まれる」だ。
コントを書くと、どうしても矛盾点が生まれる。「ストーリーを進ませるために登場人物のキャラに見合わないセリフを言わせる」、「展開の都合のため、登場人物をトイレにはけさせるが、用を足したとは思えない短さで返ってくる」みたいな都合から生まれる矛盾である。しかし、こういった矛盾を解消させるために、色々な意味をつけていく と違う展開が生まれたり、思わぬ笑いが生まれたりするというものだ。今でもこれ を意識してシチュエーションコントを書いている。
「自意識とコメディの日々」P125 (オークラ著)
それからしばらく経ち、アンジャッシュ、アンタッチャブル、おぎやはぎ、ドランク ドラゴンといった人力舎の芸人たちが自分たちの個性を打ち出したネタで人気を博していくようになるのだが、飯塚さんは長いスランプに陥る。
ネタの構造をきっちり理解、 研究し、ちゃんと練習すれば、ある程度のお客さんを笑わせるものを作ることができる (それはそれで難しいのだが)。しかし、その人の個性、人格、面白いと思う独自の思想をネタに落とし込み笑わせるとなると、格段に難しくなる。芸人が花開くもっとも大事なことは「自分はどんな人間なのか?」という自分の個性を理解し、そして、それを「エ ンターテインメントとして見せる方法」を生み出した時だ。人力舎の仲間たちがそれを 生み出す中、アルファルファはなかなか生み出すことができなかった。
僕が知り合った同世代の芸人の中で、「一番のネタオタク」と言ったら間違いなく飯塚さんだ。ネタ以外のことにまるで興味がないから、服も髪型もダサい人間だった。そんな飯塚さんだからこそ、どんどん荒んでいった。
「自意識とコメディの日々」P144 (オークラ著)