オンライン試写会で「ミッドナイト・ファミリー」を視聴。開始数分で思ったのは「本当にドキュメンタリー!?」
映像が綺麗すぎて驚く。「こんなアングルで撮影できるの!?」と思うシーンが何度も何度も目の前に広がり、驚く。
改めてWebを確認すると「米アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門ショートリスト」と書いている。ドキュメンタリーだ。
この映画の肝が「信頼」であることがWebのメイキング文章を読むと、わかる。メキシコの私設救急隊のオチョア家族に密着したドキュメンタリーは、救急隊ならではの強烈なシーンや家族のプライベートにも深く入り込む。
もし自分だったら「ここは映さないでほしい」「ここはカットしてほしい」と言うと思う。この映画はそんなシーンだらけ。強烈なシーンで構成された映画を撮影できたのは監督と家族の信頼関係があったからだろう。
一方、「信頼」に欠けているのはこの映画での舞台、メキシコ・シティだろう。警察は賄賂を要求するし、怪我人には公営の救急車は来ない。こんなメキシコ・シティの中、オチョア家族は信頼を繋ぐため、生活のため、生きるために救急車を走らす。
この映画は正直なところ、心地良い映画ではない。「じゃあ、一体どうすればいいんだ…」と思い続ける映画だ。無力感に打ちひしがれる。私設救急隊のオチョア家族を通して、目を背けたくなるメキシコシティのれっきとした現実を、鮮烈に僕たちの前に提示する優れたドキュメンタリー映画が「ミッドナイト・ファミリー」だと思う。