さのかずや著の「田舎の未来」を読みましたので、感想を書きます。さのさんとはNoMapsの時にようやくチラッとだけ会うことができました。
僕たちの未来が書いてある
さのかずや著の「田舎の未来」読了。この本を読み始めて、まず思った違和感は「あれ、自分の考えてる問題意識とは少し違うぞ」だった。なぜかはすぐ気づいた。これは「田舎」について書いてある本だからだ。
「地方創生」から始まった世間でよく言われる構図は「都市か地方か」という二項対立。
僕は地方側の人間として「田舎の未来」を読んでいた。だが、「田舎の未来」は「都市が地方か」という二項対立で済む地方の話ではなかった。もっと別の階層が存在してる。
僕が住んでいるのが札幌。札幌は田舎ではなく地方都市だった。日本には
- 都市
- 地方都市
- 田舎
があり、それぞれで置かれている問題が違うと思う。(※この区分はもっと細分化できる)
だからといって、札幌という地方都市に住んでいる僕が「田舎の未来」が他人事の内容とは思えない。田舎の問題は、近い将来、地方都市も直面していく問題だろう。
「田舎の未来」で書かれている問題は札幌にもすでに存在しているが、問題の重みは札幌のような地方都市より、本書の舞台、遠軽町の田舎の方がずっとずっと重く、深刻な問題が詰まっている。
「田舎の未来」では田舎における現在進行系の問題点がいくつも提示される。しかし問題点に対して、本書では完璧な問題解決方法は提示されない。ただ、著者による「僕はこう考え、こうやってみようと思ってる」が提示される。その中のいくつかを著者は実際の行動に移していく。
繰り返し提示される「田舎の問題点と行動」に対して、「僕はこう考え、こうやってみようと思ってる。君はどう思う?」と読者は問いかけているような気分になっていく。
本書ではこのスタンスによって、読者に対して、「(遠い)田舎で起きている問題」ではなくて、「自分ごとの問題」にさせている。
「自分ごとの問題」として提示してる顕著な箇所はP84の「消費者根性」だと思う。ここでの言及はまったく同感。最近ごく一部にある「JRは国営のほうが廃線しなくて良かった」というのはまさに消費者根性を表していると思う。
本書は理論書ではなく、伴走者本である。著者は読者を伴走者にさせている。もし、この本を読んで「何もしない人」は著者の言う「消費者根性」と変わらないと思う。
田舎の未来は、僕たちの未来でもある。僕たちの未来を、この本と共に考えていく必要があるだろう。