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自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 石井暁著 感想

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衝撃な本を読みました。それは『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』

自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体

そう、今VIVANTで話題の「別班」。共同通信社の記者による「別班」について、綿密に調査した本。

自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体あらすじと感想

VIVANTの元になったと思われる別班の内容がふんだんに詰まっています。本書は筆者が別班を知るところから、関係者に取材を繰り返し、記事として別班の存在を明らかにし、政府に質問するまでがドキュメントとして描かれてます。

記者がふとしたことで知った別班。しかし、別班について政府や自衛隊幹部に聞いても「存在しない」の一点張り。

政府が把握していない別班。これはシベリアンコントロールが効いておらず、問題があると考えた記者が別班とは何なのか、元自衛官から現役自衛官、そして元別班に取材を重ねます。その数は50人以上5年半。しかし別班はアンタッチャブルな存在なだけに、ほとんどまともに答えてもらえません。膨大な時間を掛けて、別班の存在について明らかにしていきます。

印象に残った点を引用します。

別班の拠点について

相当な数の自衛隊の現役とOBに話を聞いてまわったが、それらを整理すると、別班の海外展開は冷戦時代に始まり、おもに旧ソ連(その後のロシア)、中国、北朝鮮・韓国に関する情報収集を目的に、国や都市を変えながら、常時2~3ヵ所程度の 拠点を維持してきた。冷戦時代は主に旧ソ連、中国、韓国だったが、最近はロシア、 韓国、東欧のポーランドなどを拠点に活動しているということになる。

自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 石井暁著 P78

別班の身分偽装方法

ところが、その後取材を重ねていくにつれ、民間人に偽装する方法としては「現地法人を設立するやり方、日本企業の現地支店を装うやり方と形態はさまざまだが、いずれにしても現地では基本的に会社の表札、看板を出している」ことが判明した。さらに 「別班員は、一時的に自衛官を休職してパスポートを取得し、ダミーの現地法人か、 日本企業の現地支店の名義を使ってビザを取得している」という証言まで得られた。

自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 石井暁著 P79

別班員になるための試験

以下はAが話してくれた体験談だ。

ある日突然、当時所属していた部隊の上官の指示を受け、Aは陸上自衛隊小平学校の心理戦防護課程の入校試験を受けることになった。 面接試験では、教官が「先ほどの休憩時間にトイレに行ったな。 そのトイレのタイルの色を言え」と意表を突く出題をしてきた。情報畑の経験があったAは、見た風景の全体を記憶する訓練を受けたことがあり、この出題はなんとかクリアすることができた。

また別の教官は、大陸の形だけが描かれた地域別の世界地図を数枚示して、 「X国がある部分を示せ」と質問した。X国は目立たない小国で、難問だった。Aが「このあたりです」と答えると、「X国はこの地図には含まれていない。別の地域だ」などという無茶苦茶な出題もあった。

(中略)

田崎清人第一期生 (当時見習士官)は、「自分は、かつての陸大の試験をうけた将校から『今あがってきた階段は何段あったか」ときかれたという話をきいていた。それで、たぶん、そんな問題が出るのではないかと思っていると、はたして『いま、エレベーターに乗ってきて、感じたことはないか』と、まっ先にきかれた。『みんな扉のほうを向いていた』と答えると、こんどは、「謀略とはなにか。もし、それを南方で行なうとすれば、具体的にはどうしたらいいか』 かと質問された。それから、家庭の事情、女遊びをしたことがあるかなど、四、 五十分も、四方から質問ぜめにされた」〉

(中略)

<塚本繁三期生 (終戦時大尉) は、「生い立ちから大学を出るまでと、 世界情勢や思想動向をきかれた。『グアム島はどこにあるか。 この地図で捜せ』と、世界地図をしめした。ところが、前もってグアム島だけは消してあった。でたらめをいって、知ったかぶりをするかどうかためしたり、堅い話からやわらかい話と、われわれのときは、一人に一時間から一時間半もかけて質問した。あれだけやられたら、どんなに仮面をかぶっていてもはがれてしまうし、性格もはっきりわかる」〉

自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 石井暁著 P86〜88

別班の名称について

Aが在籍していた当時、別班のことを班員ら関係者は「MIST」 (MILITARY INTELLIGENCE SPECIALIST TRAINING) と呼称。現在の「DIT」 (DEFENSE INTELLIGENCE TEAM)という略称を聞いたことはなかったという。「その時々の班長が勝手に決めた のだろう。警察庁の(非公然情報組織の)「ちよだ」「さくら」「ゼロ」などと同じなのか」と推測した。

自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 石井暁著 P99

別班と洗脳

それは、陸上自衛隊小平学校(現・情報学校)の心理戦防護課程(CPI、現・DPO) の教育が、いかに“洗脳”というにふさわしい、非人間的な教育かということだ。そ して、別班での非合法な仕事がどんなに過酷で、人格を破壊するものかという点だ。 元別班員と会ってまず気になるのが、彼らの〝普通ではない〟眼だ。相手の心の中 を透視でもするかのような眼――元別班員たちは例外なく、私たちとは明らかに異な る〝冷徹な”眼をしていた。

以下、「はじめに」とも一部重複するが、あらためて複数の証言者の発言を順不同 で列挙して終わりたい。

■心理戦防護課程は、完全な洗脳教育だった

■心理戦防護課程以降、妻子に対しても、心の中で壁をつくってしまう 喜怒哀楽など、自分の感情を完全にコントロールできるようになってしまった

■絶対に素の自分は表に出せない。それがストレスで、休日は家族に嘘を言って

■漫画喫茶に行って、ひとりでぼんやりしている

■心理戦防護課程から、親友がいなくなった。 人生を変えられてしまった

■心理戦防護課程の教育を受けた結果 1洗脳される 2何も感じなくなる 3壊れるの3タイプの人がいる

■別班員は自分の本性を出さない。一種の精神的な病気だ

■別班生活は、精神的にやられるか、どっぷりはまるかのどちらかだ

■別班は人を騙して情報をとる。 違法なことを含めて

■本来とは違う自分をいかにつくるか。そして、それを相手にどう信じ込ませるか

■自分は必要な相手からは百パーセント情報が取れるテクニックがある

■どんな時でも、自然な笑顔をつくれる。人間として寂しい

■防衛省が「別班が現在も過去も存在しない」と言ったときはショックだった

■国は別班の存在を認めて、海外でも活動できるような体制をつくるべきだ。今、 別班がやっている活動は茶番だ

■別班の存在を国が認めなければ、ろくでもない情報しか取れない

■何かあればトカゲのしっぽ切りだろう。私たちは何で別班の仕事をしてきたか分からない。自分に何かあったとき、家族はどうなるのか常に心配だった

■別班という組織の全貌を明るみに出して、潰してほしい。 そして、国が正式に認めた正しい組織をつくってほしい

自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 石井暁著P191〜193

最後に

本書はまだ筆者が調べたりないテーマがいくつかあり、結末近くでの示唆があります。それは「別班の洗脳」「別班の資金源」「米軍と別班の関わり」。著者はまだ調べているのでしょうか。続編に期待しています。

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