映像による提示(比較文化論で使用)
9・11の事件以降、メディアの偏りは一層あらわになってきた。事件の日から数日間テレビでは、ハイジャックされた飛行機が貿易センタービルに突っこむ映像が何度となく繰り返された。メディアからこの映像が提示され、今でもこの映像は私たちの頭の中に残っている。映画みたい、と友達は言った。それはまさしく映画のようだった。
次に私たちに提示された映像は、9・11の事件によって今までの幸せが崩れた被害者の方の涙、悲痛な叫びだった。私たちはテロに侵略されるアメリカ、テロによって人生が壊されたアメリカ人の映像が提示された。
この提示された映像に対する答えは何だろう。テロが憎い、と日本人の九割以上の方はそう思ったのではないだろうか。犯人探しが始まった。アメリカはビン・ラディンの犯行だと断言した。ここで初めて待ったがかかった。ビン・ラディンの犯行だとするには証拠が少なすぎるのである。しかし、アメリカ政府はその声を一切無視し、アフガニスタンに空爆、報復攻撃を開始した。
ここで提示されるはずのアメリカによる、アフガニスタン空爆の映像はなかった。メディアはアフガニスタン空爆の映像を提示しなかった。ここの差異にメディアの権力、政治性が明らかになった。
テロよりアメリカによるアフガニスタン空爆のほうが犠牲者が多いといわれる。もちろん単純な足し引き算で命を計れるものではないが、報復の方が犠牲者が多いのでは問題ではないか。なんのための報復だろう。借りは倍返しということだろうか。それが世界一の大国の論理だろうか。
しかも、空爆の目的はビン・ラディン殺害である。一説にはビン・ラディンはまだ生きていると言われる。仮に生きていたとしたら、アメリカ政府はとんでもないミスを犯したことになる。なぜこの責任をアメリカのメディアは追及しないのであろうか。
一連の北朝鮮報道も映像による提示が行われている。もちろん、拉致は断罪されるべき重大な国家犯罪であるが、報じ方に問題がある。拉致生存者リストが発表される時、メディアが映像として提示したのは、親族の涙だった。涙→かわいそう→北朝鮮が憎い、という安易な構図では何も生まれてきません。国家犯罪、という視点から断罪すべきである。そして日本が行ってきたことについても考える必要がある。そうしなければ、議論は一層、平面なままで立体性を持たない。
無防備によるメディアの情報ばかりを受け入れたらどうなるか。
現在、日本のメディアはまだ、ましだと言える。テロの情報が流された当初は報復するべき、という論調が強かったが、現在は事件以降、アメリカの報復の愚かさ、が論じられ、アメリカのことが嫌いになった人が多くなった。国民の声を押されて総理大臣になった小泉純一郎内閣は当初、賛美される声が圧倒的だったが、現在、新聞などでは批判の記事のほうが目立つほどである。
対して、アメリカのメディアは悲惨である。前述した。アフガニスタン空爆の映像はなく、提示された映像を鵜呑みしたアメリカ国民は、自国政府の正義性を固く信じ、少しでも反ブッシュの考えを持とうものなら、それは粛清される。メディアが政府に同調し、政府は国民の思想を統制する。これは戦前の軍国主義日本の姿そのものではないか。
しかし日本のメディア問題点はある。それは一律報道である。アメリカのテロの報道にしても、小泉純一郎総理大臣誕生の時もである。さらに、皇太子の子ども“愛子様”が生まれてきたことは果たして、国民全員が喜ばしいニュースだったのであろうか。これはメディアが操作する思想統制といえるのではないか。
メディアに公平性は期待できないだろうか。民放放送のほとんどのニュース番組は、ニュースを流し、その後で司会者なりコメンテーターがコメントする。ここのコメントに政治性が含まれている。それではコメントをしない、NHKのニュースはどうだろうか? 一見、それは公平に見える。しかし、少し考えれば気づくことだが、ニュースを流す順番、とりあげる内容、映像の作り方によって、それは簡単に政治性を帯びてしまう。
映像による提示は強烈な力がある。私たちはそれを判断しなくてはいけない。メディアリテラシーの考えをもつ必要がある。今やアメリカはイラクを攻撃しようとしている。これは第三国としての問題ではない。アメリカとは同盟関係を結んでいる。日本もなんらかの形で軍事協力するだろう。同盟関係を結んでいる以上、それに対して一概に全面反対することは難しい。日本の将来が危うい現在、日本国民一人一人力を蓄えることが、日本、あるいは世界の繁栄につながり、笑顔がひとつでも増えることを固く信じている。
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過去にFC2ブログで運営していたブログ「大学生レポート書き方・作成サポート」の文章を#AKANUMAに移転した文章です。
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