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「片手袋研究入門」は路上観察マニア本の金字塔。美しい構成であり、小説や物語を読み終えた読後感

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石井公二著「片手袋研究入門」、素晴らしすぎて、二回読みました。発売直後に買ったのですが、レビューが遅れたのは噛みしめるように読んだから…!

正直なところ、自分がこのような本が書ける時が訪れたら、構成を真似したいと思うほど美しい構成の本でした。(あらかじめ謝っておきます。構成を真似して本を出していたらごめんなさい) マニアものの本はこの構成で書けば、ある程度の水準になるのではないでしょうか。もちろん、「片手袋研究入門」は”ある程度”を大きく越えた、路上観察マニア本の金字塔になる本でしょう。

石井公二著 片手袋研究入門
石井公二著 片手袋研究入門。なんとフルカラー

イントロダクション

「イントロダクション」では著者と片手袋との出合いと誓いについての記載。ここから著者と片手袋の物語がスタートします。

「片手袋とは何か?」では片手袋の仮定義について記載。ただし、あくまで仮定義がポイント。この定義が後々、どのように変わるかがワクワクします。

「なぜ片手袋は発生するのか?」では、人とモノとの関係性の話。「街歩き」「路上観察」では、対象とする観察物のモノ”だけ”に注目することは少ないでしょう。概ね、そのモノがどんな歴史を辿ってそこにあるのか、周りとどんな関係があってそこにモノが存在しているのか、など、人とモノの関係性があってのモノ鑑賞になることが多いでしょう。本書では「人間がどのようにして、片手袋を発生させたのか」を解説しています。

ファッション・防寒類 介入型 ポールスタンド系?の片手袋 2015年小樽市
ファッション・防寒類 介入型 ポールスタンド系?の片手袋 2015年小樽市

「片手袋研究とは?」では鑑賞ポイントの概要を4点に渡って記載。

「片手袋研究のルール」このルールこそが本書をノンフィクションのドキュメント本としても捉えられる肝。このルールを巡る著者と片手袋の関係が情緒性を生み、本書が単なる研究書で終わらないポイントになっています。この情緒性から、本を読み終えた人は小説や物語を読み終えた時のような気持ちを味わえるようになっています。

ルールの一例をあげると「片手袋は絶対に撮影し、絶対に触らない」。バスの窓から片手袋を見つけると、目的地ではないのに次のバス停で降りて撮影。片手袋の配置を直して撮影したいのに、撮影できない。片手袋にかなり近づきたいにも関わらず接することができない構図は、ファンとアイドルの関係のようにも思えます。今時のアイドルは握手などで触れることができますので、著者にとって片手袋はアイドルよりも神々しい存在なのかもしれません。

第1章 片手袋分類図鑑

第一章の片手袋分類図鑑では、有名なチャート式の「片手袋分類図」が登場。分類クイズが出題され、読者も自然と片手袋の分類ができるようになっていきます。

その後は図鑑形式で各分類ごとに特徴、分布、旬が詳細に説明。こんなにも片手袋について語れることがあるのかと圧巻な内容になっています。

個人的に凄いと思ったのは、統計資料①「2018年に発見した片手袋の統計【第1段階分類別】」。分類と月で収集数をグラフ表示。私も収集物のグラフ表示を試したことはありますが、月で区切り、季節による違いを出せる点は片手袋ならではと思いました。(やはり片手袋の発見は冬に多いのですが、種類によって多少の差があります)

ファッション・防寒類 介入型? トイレ系?の片手袋 2015年札幌市中央区
ファッション・防寒類 介入型? トイレ系?の片手袋 2015年札幌市中央区

コラム1の「認識すると見えてくる」が今、私が最も考えてる街歩き哲学のうちの一つ。「見えているのに見ていない」私も最近、この事実に気づき、この点はもっと深めたい。著者のこの考察文章が見れたのは個人的に嬉しいポイント。

第2段階から始まる「過程で分ける」は「片手袋」特有の「介入型」について登場する重要な箇所。路上観察趣味は数多くあれど、「介入型」があるのは数少ない対象でしょう。あわせて、重要なのは「介入型」という視点。今まで私は路上観察において「介入か、非介入か」という視点がなく、今まで「介入」は見えてませんでした。

著者の石井さんが「介入型」という概念を紹介することによって、私にも「介入」という視点が見えるようになったのです。本書にも記載がありますが、この介入型という視点を登場させたのは石井さんの大きな功績だと私も考えます。介入型の箇所では「片手袋」によって、繋がる人と人を本書では詳細に言及しています。詳しくは本をぜひ手に取ってご覧ください。

軽作業類 介入型 ドア系?の片手袋 2018年札幌市中央区バスセンター
軽作業類 介入型 ドア系?の片手袋 2018年札幌市中央区バスセンター

第3段階では状況場所で放置型と介入型を分類。こんなにもパターン分けできるのだなと深く感心します。

「分類の注意点」では「分類図は決して完成形ではない」という驚くべき注意が語られます。「こんなに完璧な分類を見せられたのに…」という気がします。「世の中の片手袋は分類できないもののほうが圧倒的に多いのです」とも語られます。「今までの分類は…?」という気さえします。

しかしそうではなく、「分類図はその広大な世界を冒険する際の地図なのです」と語られます。「この地図を持って片手袋観察の旅に出ればいいのか!」と勇気づけられるでしょう。

ファッション・防寒類 介入型 街路樹・植込み系の片手袋 2012年札幌市中央区
ファッション・防寒類 介入型 街路樹・植込み系の片手袋 2012年札幌市中央区西11丁目

第2章 片手袋の現場

第2章から始まる「片手袋の現場」では各地に取材が入り、さまざまな角度から片手袋を見ることができ、より一層、重層的に片手袋を考えることができます。中でも、「拾得物としての片手袋」では警視庁による片手袋の統計データが…!そして「深海の片手袋」では、なんと深海の片手袋を見ることができます。

第3章 創作物の中の片手袋

第3章から展開される「創作物の中の片手袋」では創作物に登場する片手袋について紹介されます。ここにも「見えている人」と「見えてない人」の差が出てくるでしょう。

最終章

最終章では片手袋についてさらに深い探求が。「片方とは何か」「手袋とは何か」そして最初に語った片手袋の定義が改めて語られながら、著者の石井さんが悟った境地について語られます。これは必見。本書を最後まで読み、片手袋と向き合った読者へのご褒美となるでしょう。

片手袋研究入門 小さな落としものから読み解く都市と人
石井 公二
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「片手袋研究入門」の著者、石井公二さんを動画で観れる!

さて、「片手袋研究入門」が気になった皆さん、著者の石井公二さんを動画で観ることができます!別視点チャンネルに著者の石井公二さんと、片手袋を見守る会のmariboさんのインタビュー動画があります。深い深い世界を知ることができますので、ぜひご覧ください。

お知らせ①マニアフェスタに出展

そんな石井公二さんも片手袋マニアとして出展する(※はずです)マニアフェスタに、私、赤沼俊幸はドジっ子看板マニアとして出展します。ぜひ遊びに来てください!詳細は↓のURLをご確認ください。

マニアフェスタ vol.4に「ドジっ子図鑑」等を出展します👦

https://twitter.com/dozicollection/status/1218746477956067329

お知らせ②路上観察系の読書感想

「片手袋研究入門」以外にも路上観察系の本の感想を書いています。よかったらご覧ください。

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